HouHou-ShuHou!第31号
夏休みシーズン。みなさまいかがお過ごしでしょうか。低山で遊ぶには汗だく覚悟の季節が、もうしばらく続きますね。
こんな季節は朝駆けが楽しい!

「朝駆け」という言葉が「暗いうちから出発し、日の出を拝んでから下山する山歩き」ということを指すのは、全国共通ではないそうですね。主に、九州のエリアで使われる言葉だそうです。朝駆けは涼しいうちに行動できて、下山後に1日がはじまるというお得感があるところがいい。
天気予報を見て大体の予想はつくものの、実際に日が登るその瞬間まで、どんな景色が広がるかはわからない。朝焼けを期待してはりきって登ったのに、太陽が雲に隠れていて「え、気づいたら日の出時刻過ぎてるんだけど!」なんて日もあれば、「今日はぜんぜんダメだぁ」なんて景色から、雲が流れてあれよあれよと大逆転の景色にうっとりすることも。わざわざ遠くの山へ行かなくても、近くの山でもドラマチックな景色や時間を堪能できるところもいい。なんなら、わたしのおすすめは自分の家が見える範囲の山。自分が毎日寝起きするその場所が、こんなドラマの中にあるんだって思えるところが好き。

わたしの、「夏の朝駆け」思い出暫定ナンバーワンは、貫山(平尾台の最高峰711m)から見た雲海です。
まだまだ真っ暗な8月初旬の午前3時半、茶ヶ床園地の駐車場で待ち合わせ。前の晩からやってきて車中泊をしていた友人は、バイク族のブンブンいう音で全く寝られなかったとのことで、目がぜんぜん開いてない。空を見上げると、まだ星々の輝きが明るく「トクベツなことをしている」という気分を盛り上げてくれる。
真っ暗闇の中を歩くなんて、それが今まで何度も歩いた道だとしても、全く内容の異なる大冒険になっちゃうところが面白い。特にこの時期の平尾台は草ボーボーのエリアが多いから、一緒に歩く夫ゆうすけも、友人おばくんも身長が180cmくらいあるのに、暗闇で色のない草の間に吸い込まれて姿が見えなくなってしまう。ヘッドライトの明かり以外は、黒か墨色しかない世界。「怖い」「大丈夫だろうか」という感覚が、ずっと肌にはりついている。
草には露がつき、手でかき分けるとひんやり冷たい。かき分けた先に置く一歩が、安全なのかな、どうなのかな、いちいちドキドキする。目の前で道が二手に別れるのも、ドキドキする。明るい時は景色が見えるから「ここで分かれても、またすぐに合流するから、どっちの道でも大丈夫」って呑気に構えられるようなところでも「本当にこの道であっているのだろうか?」と不安が募る。不安すぎて、だんだんイヤになってくる。引き返したくなってくる。
ただ「これから明るくなってくるんだ」という希望が、そのイヤになってきた気持ちを薄めてくれる。

歩き出してしばらくすると、真っ黒だった世界が少しずつ白んで、色を取り戻してくる。草の隙間からは、鳥の声や虫の羽音が聞こえはじめて「あ、今、自然の世界は朝を迎えたんだ!」っていう瞬間があった。明るくなってきて気づいたけど、ん?なんかガスってない??このまま歩いて、日の出は見られるんかなぁなんてブツブツ、ふぅふぅいいながら稜線に出る。視界が開けると「あ!」向こうに赤くそめられた雲が広がっている。
「見て!」と指差すと同時に、貫山の頂上に向けて走り出す。山頂直下の急登、普段はきついきついと文句を言いながら歩くのに、この時ばかりは鹿のように跳ねて、あっという間に登りきった。そこに広がっていたのは、一面の雲海。それを染める朝日。

あぁ、なんて美しいのだろう。すごくすごく特別に思える時間だけど、同時に特別でもないのかもしれないとも思う。

私たちの生活は、こんなに素晴らしい景色のその下で繰り広げられている。つい目の前の限られた世界しか見ていないのだけど、こうしてちょっと引いて高い視点から同じ世界を見ると、こんなに違うものを見ることができる。それを思うだけで、しんどい朝だって元気になれそうだ。

◎朝駆け登山いくつかのお約束
・日中に何度か歩いたことのあるコースを選ぶ
・ひとりで行かない
・地図アプリを起動させよう
・ヘッドライトは予備も持っていこう
・日の出前や稜線上は寒いので防寒着はわすれずに
・腹ペコ対策しっかりと 短時間の行動でも必ず食べよう
・水を持っていくのを忘れやすいから気をつけて
日の出30分前には、景色が見えるところにいるのがおすすめです。日の出時刻ちょうどじゃ、遅いのよ。1時間前くらいから刻々と変わっていく景色の中に身を置いて、地球の一部になってください。ポットにお湯を入れていって、日の出を待ちながらコーヒーを飲むのもいいよね。荷物を持って行き過ぎてもしんどいけど、安全に快適に過ごすためにおすすめのアイテムがあるので、ご紹介しますね。
◎朝駆けを快適にするアイテム5選
・待ち時間が快適に 深山座布団
・思ってたより寒かった時の救世主 エマージェンシーブランケット
・予備のライトに レッドレンザー
・あったかい飲み物でホッとしたい 山専ボトル
・早起きすっぴんだと下山時に焼けるよ スティックタイプの日焼け止めFAVSOL

北アルプスで見たご来光、雲海も、もちろんすっごくかっこよかったんだけど「いつもの山を、違う味付けで楽しむ」っていうのが、わたしの朝駆け推しポイントなのです。なんていうか、日常がね、さらに豊かになる感じが好きなんですよね。いつものあの人の、違う一面を見るとドキっとしたり、より深くその人を知れた気がしたりするでしょ?そんな感じかな。
空と雲と光のショーを堪能したあと、満たされた気持ちで下山する。ラジオ体操の帰り道みたいな、清々しい気持ち。いつもの景色が、さらにまた違って見えたりするんだよなぁ。寄り道しないで降りれば、資さんの朝定食タイムに間に合っちゃう。帰ってシャワーを浴びたあとに、うとうとする時間も夏休みっぽくていい。

こうして改めて朝駆けについて語ってたら、行きたくなってきたなー。工夫と冒険心で、暑い夏もお山を、自然を楽しみましょうね。
もうお盆休みがスタートした方もいるのかな?みなさんから夏のお山の話、聞かせてもらえるのを楽しみにしています。朝駆けチャレンジしたい方も、相談してくださいね。喫茶スペースではおいしい飲み物を用意して、みなさまをお待ちしてます。ビールの日は水曜・金曜(お休みの時もあるのでスケジュール要チェック願います)です。
それではまた来週。ばいばいホウホーウ!